丁寧に制服を畳みながら、独り溜息を洩らす。オシリスレッドに降格になった以上、この青い制服に袖を通すのも今日で最後になるのだろう。名残惜しさは微塵もなかった。むしろこの、短いスカートに大胆に露出した二の腕、どこの(いかがわしい)お店の制服?と地元の友人から聞かれそうな派手な制服とおさらば出来るのならば、降格処分だろうと待遇が悪くなろうとレッド寮で紅一点だろうと、諸手を挙げて迎え入れたい気分だ。
 何を隠そう、私がデュエルアカデミアで不登校(全寮制の学校の、校内である寮に住んでいる時点でこう言うのは語弊があるが、他に良い言葉が見つからない)なのは、この惜しげもなく素肌を露出した制服に要因がある、と言っても過言ではない。色味的にはオシリスレッドの制服は、レッドゾーンを意味する真紅と派手だが、長袖長ズボン。オベリスクブルー女子の制服とどちらがましかなど、比べるまでもない。
 最後に、気に入っていた壁時計をキャパシティの限界を超えそうなキャリーケースの中に押し込んだ。元々、私物がそう多くない為、引っ越しは楽だ。半年以上住んだ広い部屋に合わない、少量の荷物は大きめのキャリーケース一つに纏まった。


さん、いますかにゃ?」
「はい、開いてます」


 タイミングを見計らったような来客に、食べようとしていた飴を、そのままポケットに押し込む。大きめの白い扉を開けて入室して来たのは、一度聞いたら忘れられない語尾を使う、デュエルアカデミアで錬金術を教えている大徳寺先生だった。彼の下の名前は知らない。人好きのする笑みを浮かべている彼は、一見して穏やかで、初対面では好印象だ。
 こんな人が自分の恩人の為とは言え学園を、いや、デュエルモンスターズの存在すらも危機に陥れようとするのだ。鮫島校長の前とは逆に、人間とはよく分からない生き物だと独り言ちた。
 学園の危機、デュエルモンスターズの危機。たかがデュエルモンスターズ、と昔の私ならば笑い飛ばしていたのだろうが、悲しいかなこの世界は、デュエルモンスターズが重要な部分を占める事が多い。世界の情勢を動かす程の力がある会社のトップが、カードゲームで変わってしまったり、時には命を賭けたり。……正直、もう嫌だこんな世界。


さん? 上の空でどうしたんですにゃ?」
「え……いえ、荷物整理と慣れない作業をしたので少し疲れてしまって……」
「そうですか。手伝おうと思って早めに来たのですがもう終わってしまったみたいですにゃ。でしたら、レッド寮に案内しますけどいいですかにゃー?」
「大丈夫です、お手を煩わせてしまって申し訳ありません」
「そんなに畏まらなくていいですよ。これから同じ寮に住む者同士宜しくお願いしますにゃ」
「いえ、こちらこそ宜しくお願いします」


 差し出された手を握り返す。ひんやりと冷たい大徳寺先生の手は、女の人みたいに白くて綺麗で細い。この手が彼を守り、成長を促すのだと漠然に思った。



呂色の手